庵に着くとすぐに、勘解由は幻之介を湯殿へと運びいれた。
自分で立っている事も辛い様子の幻之介を下ろすと、そっと柱に凭れかけさせた。
「何された、幻」
その、言葉に幻之介の体がびくりと怯えを見せた。
「ごめんなさい…」
咄嗟に帰って来た幻之介の言葉。完全に、怯えていた。
「怒っているわけじゃねえ…。あの男に…、なんか飲まされたか…」
体を支えてやりながら、勘解由はそう問うていた。
幻之介は、怯えながらも、小さな頷きを見せただけ。
「体、もう辛いよな…」
そう声をかければ、幻之介からは大粒の涙が零れた。
魔王が幻之介に飲ませたのは、ただの気付け薬でしかなかったのだ。しかし、幻之介の体にとってはある種の劇薬となっていた。人でない体が災いしてか、幻之介の体を蝕んでいく。終わりを見ない快楽へと誘っていたのだった。当然、勘解由も幻之介もその事は知らなかった。
無意識に漏らした勘解由の舌打ち。幻之介はそれにすら怯えを隠せないでいた。
「あの野郎の事なんか忘れさせてやるさ。なあ、幻…」
云うが早いか、幻之介を立たせたまま、勘解由はその着物を剥いでいった。
幻之介は、怯えたままで素直に身を任せていた。が、流石に下帯に手を掛けられた時に小さく頭をふった。
「…あのっ」
「黙ってろ、幻。そのまんまで良いから…」
すっと勘解由がその場に膝まずいた。ちょうど眼の前には幻之介の濡れた下帯。
幻之介は怯えた表情のまま、勘解由を見下ろしていた。
「…動くんじゃねえぞ」
勘解由の言葉に幻之介は小さく頷いてみせただけ。それを確認してか、勘解由は幻之介の下帯に手をかけた。
つるりと引き出された物が、勘解由の口の中へと誘い込まれた。
「…んふうっ、…だっ…め…っ」
途端に幻之介からは甘い声が漏れ出した。逃げようにも、背後の柱に阻まれて体も動かせない。下肢はがくがくと震えだし、力も入らなくなっていった。引き剥がそうとでも言うのか。幻之介の手が勘解由の頭に触れた時、殊更大きく艶やかな声で泣き始めたのだった。
「だめ、もう…。ふぁっ…んんんん…」
勘解由の吸いあげに、腰も淫らに動きはじめた。濡れそぼった先からは雫が溢れ出してきている。それでも、逃げ出そうとする幻之介の腰先を封じるかのように、勘解由はその片足を持ち上げて、己の方の上へと乗せた。
より深く吸い込まれていく物。後ろの窄まりも弄られては幻之介はただ、ただ懇願するばかり。
「お願い…、もう…、離して…」
聞こえない振りを装う勘解由は、より強く吸い上げる。指先での刺激も加えながら…。
引く事も出る事も叶わない容赦のない刺激を前に、幻之介の体がゆっくりと勘解由の方へ倒れていった。股間に纏わりつく男の頭をその胸の中に納めるようかの姿勢。
「もう…っ」
か細い声を漏らして、幻之介の体が震えた。
乱れた吐息の合間に聞こえるのは、弱々しい啜り泣きの声。
「どうした。泣くほど嫌だったのか」
同じ体制のまま、幻之介を見上げた勘解由が問いかけた。
幻之介は、激しく頭を振りながら、
「ごめんなさ…い…」
と、涙を零して勘解由に訴えた。
「何を謝る…」
「だって…、あの…」
「こう云うのも、初めてか…」
勘解由は、己の濡れた唇を拭うとそのままの体勢で立ち上がった。当然のように、幻之介の片足どころかもう一方の足まで抱えあげながら…。
柱との間に挟まれた幻之介は、思わずな体勢に目の前の男にしがみ付いただけ。
「このまんま、おめえの中に入りてえぐらいだがな…」
勘解由の言葉に幻之介の顔が朱に染まった。
「脱がせてくれよ、幻…」
耳元への囁きに、殊更幻之介の肌の色が赤みをさした。それでも、幻之介は震える手先で目の前の男の襟元を肌蹴ていった。抱えられた、体勢のままで。
いつの間に解いたのか。勘解由の袖を外せばお互いの素肌だけが触れあう。
どちらからともなく寄せられる唇。絡み合う舌先の刺激にか、幻之介の腰先も再びの揺れ。物欲しげに収縮を繰り返す幻之介の入口に己の物をあてがう勘解由。一瞬だけ、幻之介の体が震えを見せた。解してあるとはいえ、未だ十分とはいえない窪み。
「…いいか、幻…」
勘解由の問いかけに、僅かに頷きを見せはしたものの、最初の時の事が思い浮かぶのか僅かに眉根が寄せられていた。
「…嫌なら、無理にとはいわねえ…」
その言葉に、幻之介はただ眼をつぶっただけだった。心なしか、その頬も朱に染まっていた。が、しがみ付いた腕に僅かばかりの力が入った。
「……来て」
微かに呟くような、幻之介の囁き。
勘解由の顔が思わず綻んだ。
「…力抜け、幻。…いくら声出してもかまやしねえから…」
わずかに息を吐きだした幻之介の中に、己の切っ先をめり込ませていく。
「はっ…、ぐっ…ううっ、ひっ…あ、いっ……あうっ、……」
見開かれた幻之介の瞳からは、大粒の雫が溢れ出した。逃げる事も叶わず、しかも己の重みも加わって容赦なく開かれていく苦痛の為にか背後の柱に頭を擦り付ける勢いで反り返っていく。それでも無意識なのか。腰先だけは、勘解由に擦りつけようとするかのように前にさし出された。
わずかに勘解由の切っ先を含ませただけの事。幻之介から漏れ聞こえる声は、苦痛の色の方が濃い。
「辛えよな…」
そう、問いかければ、幻之介は頭を振って見せた。勘解由に回された指先が、その背に食い込むほど。あまりの幻之介の状態に、流石の勘解由もその動きを止めた程。が―――、
「…嫌、…やめ…な…で…」
苦痛に歪んだ表情のままで、勘解由を見つめ返してきたのだった。
「でも…、おめえ…」
「いい…。こ…のま…ま…、壊…れて…も…」
荒い呼吸の下で、幻之介が言った。
前の時は、その衝撃で縮みあがってしまった物も今回は隆々と天を仰いだまま。それだけに、幻之介の体を苛んでいる物の存在に勘解由は舌打ちをするしかなかった。
それに反応したかの様に、幻之介の腕から僅かばかり力が抜けた。怯えたような瞳が見つめ返したきたのだ。
「嫌…いに…なっ、ひいっ…いっ…ひゃああっ…」
「だから、そうじゃねえっ…。嫌ならこんな事しねえだろうがっ」
勘解由は、一気に残りの部分を納めると、幻之介の体を抱き直した。背後の柱からさえも離された事など気がついてもいない幻之介。その体を両腕で支えた。
「ちゃんと、しがみ付いてろや…」
云うが早いか、その体勢で勘解由は一歩を踏み出したのだった。
が、その振動に幻之介の口からは悲鳴が上がるばかり。僅か二間足らずの距離の移動にも幻之介にとっては苦行に等しい時間だったようだ。
繋がったままで湯船に身を沈めた頃には、幻之介の口からはか細い啜り泣きしか聞こえなくなっていた。
「体、冷えちまったな…」
そういう勘解由の問いかけにも、啜り泣きの声だけが答えを返してよこした。
ゆっくりと身を沈めた湯船の中。勘解由の上に跨がされたままの幻之介は、ぐったりとした様子。苦痛に歪んだ顔のまま勘解由の胸元へとその身を寄り掛からせていた。
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