薄汚れた姿の金髪の少年は、兜を抱えたドゥナミスに向かって膝をついて見せた。
「何をすれば宜しいのでしょうか…」
心なしか、声は震えていた。
その姿を見下ろしていたドゥナミスは、苦笑いを浮かべながら、声をかけたのだった。
「こっちだ。ついてこい…」
相手の反応を見る事もなく前を進む男の後を、少年は急ぎ足で付いていった。そうしなければならない程、男の歩みが早かったからなのだ。
少年はキョロキョロと視線を動かしながらも、男の後ろをついていく。長く薄暗い回廊のその先、突然開けた眩しい空間が飛び込んできた。豪華な彫刻が数多く配置されたそこは噴水のように湯があふれていた。
中央の湯船を取り囲むように、人が寝そべる事の出来そうな程のベンチがいくつも配置されていた。そのいくつかには、肌も透ける程の薄布一枚を纏っただけの若い男女の姿。それぞれが、ベンチに思い思いの姿で休んでいたのだった。
そのすべてが金髪碧眼を持つ若者。そしてその表情は誰もがとろんと虚ろなように感じられた。少年にとっては眼のやり場に困る状況。頬を赤らめながらその場で俯いてしまった。
いつの間にか目の前を歩いていた男は姿が見えなくなっていた。それに少年が気付いた時には、別の男の笑い声が聞こえていた。
その声に、少年はきょろきょろとあたりを見回した。採光用の窓から降り注ぐ太陽の光が、暗闇の中に潜む声の主を見つけにくくしていたから…。男の笑い声は反響して、どの部分に居るのかすら解らない状況なのである。
「薄汚れてはいるが…、磨けば相当のモノになるか。流石だな、ドゥナミス。私の好みをしっかりと心得ている…」
状況もわからぬ少年は、ただその場に立ち尽くしただけ…。
「…磨きあげよ」
笑い声の主の命令に反応するように、ベンチについていた若者たちがゆっくりと少年を取り囲み始めた。
「あの、…何をっ」
少年が身を捩る様に逃げ出すよりも早く、若者たちの手が少年の体を押さえつけた。剥ぎ取られていく衣服。浴びせられるお湯。表情一つ変えずに、若い男女の手が少年に向けて伸ばされた。
少年が暴れ出そうが何をしようがお構いなしに次々と手は少年の肌に触れていく。
「洗い残しなど無い様にな…」
暴れ出す少年を馴れた手付きで拘束していく若者たち。それこそ指の入る場所と云う場所すべて洗い清められるまでその行為は止まる事が無かった。時折聞こえる少年の悲鳴を聞きながら、領主マルキドゥスは傍らに控える男に小さく告げた。
「流石は我が自慢の騎士。中々の原石を見つけ出してくる…。洗い終えたなら、次の間へ連れてくるが良い…。あれは我が手で直々に…、少しずつ慣らしてやろう」
つるりと、己よりも背の高い男の首筋を指先で撫で上げた若き領主マルキドゥス。少年の泣き叫ぶ声を聞きながら笑い声も高らかに奥の部屋へと引き上げていった。残された男はすでに甲冑を解いていたドゥナミスであった。
「御館様にも困ったもんだ…」
誰に聞かせる訳でもなく、そう呟くと目の前で繰り広げられている光景へと視線をずらした。獲物を連れてくる度に繰り広げられる毎度の光景。ただし、今回ばかりはその段取りが異なっていた。
些か元気の良すぎる獲物を目にしてか、どうやら興味が惹かれたらしい。最初から相手をするなどという発言は未だかつて聞いた事もない。
(当面は、これで落ち着いてくださればいいが…)
すでに少年は後ろ手に拘束され吊るされている。余程ひどく暴れたらしく、纏わりつく若者たちの中には傷を負っている者もいた程。かろうじてつま先が床に付く程度に吊るし揚げられ、しかも轡まで噛まされていた。涙で潤みきった瞳は怯えの色を隠しもしない。縋る様な視線を送る少年を見据えたまま、傍の若者に告げた。
「例の物を…」
無言のままドゥナミスに差し出された物を見て少年は呻き声をあげたまま激しく頭を振った。
若者が捧げ持つ蓋付きの入れ物に入っていた中身。あからさまに淫具と解る形状をしたものの存在。その傍らにはガラスの器が並んでいた。中にはどろりとした液体を湛えたノズルの付いた物。目の前の男がその容器を手に取り少年の背後に近づいた。
「大人しくしているが良い…。怪我するぞ」
云いながら、少年の尻の窄まりにノズルの先をあてがったのだった。
少年は一層頭を振った。呻き声も大きくなっていく。
構わずにドゥナミスはその先を押し込む。不自由な体勢のままのけぞる少年。ゆっくりと注入されるものの感触にその目は大きく見開かれていく。何度か繰り返されたその行為の為に、少年の下腹部は膨れ上がってきた。徐々に少年の体からは脂汗が滲みだしてくる。
ドゥナミスがその傍を離れた途端に少年は両足をとじ合わせながらもじもじと身体をゆすり始めた。
「出して構わんぞ…」
その様子も見ずに男は少年に声をかけた。容器を傍の若者に与えると、男は静かに命じたのだった。
「こうやって奥まで洗え。…御館様の所望だ」
その言葉に、周りの若者たちの目つきが変わった。先程までの虚ろな表情では無く、明らかに羨望や嫉妬を含んだ眼差しへと―――。
「傷一つ付けるなよ、念のために言っておくがな…。磨き終えたら連れて来い」
そう言い残すと、ドゥナミスはその場から消えたのだった。


